作者: 生田勝利 先生
2022年度より、日本の高等学校では新学習指導要領の改訂に伴い、教科書が新しくなり学習内容も大きく変わりました。そして、ここでのキーワードが「主体的・対話的で深い学び」です。これまでの学習指導要領では「教師目線」の表現がなされてきましたが、「主体的・対話的で深い学び」は生徒が主語になっており、「生徒目線」の表現に変わっています。何を学ぶかに加えて、「生徒がどう学ぶか」も重要になるのです。アクティブラーニングという言葉で表現されるように、知識を関連付けてより深く理解し、問題を見つけて解決策を考えるような探究的な学習、また、議論や発表によって理解を深める学習などが行われます。
(※新学習指導要領「資質・能力を育むために重視すべき学習過程のイメージ」より)
物理、化学で学習する内容には、目に見えない概念が多くあります。例えば、力、慣性、原子、分子など日常生活では、意識しない抽象的な事柄です。これらを、いかに身近なものとして捉え、実感を伴って理解していけるか工夫をしています。
<実践例1> 「力の表し方」 抽象的な概念を身近なものとして捉える工夫
力には物を変形させるはたらきがあること、また、向き、大きさ、作用点の3つの要素があることを、身近な事例を提示することで概念を捉えやすくしました。
<実践例2> 「慣性の法則」 自然事象から課題を設定するための工夫
コップの上にコインをのせたカードを置き、カードを指で勢いよくはじくと、コインだけがコップの中に落ちます。この現象をまず提示することで、生徒はなぜコインだけが真下に落ちるのかという疑問を抱きます。これを、初めから「静止している物体は静止を続ける性質がある。この性質を慣性という。」というように、説明してしまうと、生徒は意味を深く考えようとせず、言葉だけを暗記しようとしてしまいます。これまでの学習をもとに、予想をし、検証していくプロセスを大切にしていきたいと思い、できる限り事象を提示するようにしています。
これまでは、オンラインでの授業が続き、生徒が実際に実験や観察をして検証することが難しい状態でした。今後、対面式の授業ができるようになったら、実験や観察を通して、生徒が自分で課題を探求し解決していく学習過程をさらに進めていきたいと考えています。